第5章 トリガーの襲来
それからすぐ逢坂さんは、事務所に行くと言って寮を出てしまった。
三月くんが戻ってくるまで待ってくれていたのか、逢坂さんは出る時少し急ぎ足だったようにも見えた。
もしかしたら、私に熱があったから、至急の時の為に対応できるように、逢坂さんが待機してくれていたとか。
そうだったら、本当に申し訳ないし、後でお礼したい。
三月くんは、私がちゃんとお昼を食べた事、薬を飲んだ事、数時間の睡眠を取っている事を確認してから。
それじゃあ、と寮の中の仕事を一つ一つ教え始めてくれた。
まず洗い場のスポンジや洗剤の種類。
食器用、水筒用、金物用、シンク用と、成分やスポンジの硬さ、形などがそれぞれ違っていた。
詰め替えや予備の場所も教えてくれる。
野菜の切り落とし部分などの生ゴミの処理方法や、分別、ゴミの回収日が纏められた表が壁に貼ってあり、分からないところや細かい事は、誰に聞いても答えてくれるだろう、と言われた。
鍋やフライパンなどの大物を仕舞う場所、食器棚の中のおおよその位置、洗った食器の水気を取る布巾などは、とても分かりやすく近い場所に配置されている。
テーブル用の布巾、消毒用のスプレー式アルコール、シンク用の布巾などは、間違えないようにと注意された。
まな板も魚介類用、野菜用、肉類用で分けられている。
包丁も切れ味や形が違っていて、台所周りがとても衛生面で徹底されているなと感じた。
次に掃除用具の場所と機械類の大まかな使い方、共有スペースの掃除のポイントと、各個室の掃除はそれぞれ自分でやるようにしていると言われて。
そこは多分プライバシーもあるだろうからなぁ、と考え私は個室にはわざわざ掃除に入らないと約束する。
三月くんは、私が頷いたのを見て、少しほっとしているようだった。
浴室やトイレの掃除も一応教えてくれたけれど、自分達でできるからあまり手をつけないでほしい、と言われた。
最後に、洗濯物について少し確認をされる。
「自分の物は自分で洗濯機回して、自分で干すようにしてるんだけど、やっぱ女子の目に入れる訳にいかねぇよなって、昨日一織と話してたんだ。でも洗濯物は日に当てて干した方が清潔だし、陸の事もあるからさ。一華はどうしてほしいとか、あるか?」
こういう事を素直に話して、私の意見も聞いてくれるのは、とても嬉しい。
