第5章 本音
リゾットside
『じゃあ…何で兄貴とキスしそうになった時、止めたの?放っておけばいいじゃない。』
その言葉に、何も言えなくなる。
『リゾットさんはずるいよ…期待させたり、突き放したり…私の気持ちはどうなの?考えた事ある?』
「それは…悪い…俺も自分で何故そんな事をしたのか、分からないんだ。」
『リゾットさんは私のこと、どう思ってるの?リゾットさんの気持ちを知りたいの。』
夢主の綺麗な瞳に真っ直ぐ見つめられ、目が逸らせなくなる。
こんなに真っ直ぐに俺に向かってくる奴なんて…初めてだ。
「…夢主、俺は……」
お前のことが好きだ。
でも自分に誰かを愛する資格なんてあるんだろうか。
それに仮に自分と一緒になったとして、夢主は幸せになれるのだろうか。
そんな考えが、頭の中を巡った。
ふと、夢主が俺の肩に項垂れてきた。
「おい夢主…お前少し酒を飲みすぎじゃあないのか」
『あ、すみません…ちょっとだけくらくらして』
「部屋に連れてってやる…歩けそうか?」
『嫌…まだ、ここにいたい。ここで寝たいです…』
「それは絶対に駄目だ…おい」
夢主が目を閉じて完全に寝る体勢になった。
まずい…これは、危機感が無いとかいうレベルじゃあない…。
運んでいくか…だがもし他のメンバーに見られたら変な誤解をされそうだな。そっと、夢主を抱き上げてベッドに寝かせた。
俺は何をしてるんだ…。
夢主を見る。
守ってやりたい…何があっても。
『……。』
小さな唇が少し開く、赤く染まった頬にはだけた胸元から除く白い肌を見て思わず唾を飲み込んだ。
無意識に、唇に触れていた。
『ん……リゾットさん…』
「何だ…」
『抱っこして…』
どんだけ屁理屈を並べようとも、人の感情は正直だと思った。
俺は気付くと夢主の隣に横になり、その小さな身体を抱きしめた。柔らかくて小さい。
暫くして、俺の腕の中で寝息を立て始めた夢主。
めちゃくちゃにしてやりたい、そんな思いが湧き上がる。
「夢主……好きだ。」
気付くとそう呟いていた。
夢主は寝息を立てていて、恐らく聞いていない。
髪にそっとキスをして、俺も目を閉じた。
・