第10章 体育祭
「名前っち!」
『わんわんだー』
「オレ犬じゃないっスよー」
『わんわんだー』
「うう…てか名前っち浮気っスか?さっきなんか…男と楽しそうに話してたじゃないっスか」
『いつから涼太と付き合ってることになってんだ思いこみ怖いぞ』
「ひどいっス!忘れたんスか!?」
『忘れたも何も知らないよ』
まじめに何の話か知らないので困っていると、涼太が「ジョーダンに決まってるじゃないスか」と笑っていた
「それにしても名前っち、ダンス上手いっスね!」
『涼太もね』
「オレ人のしてること真似するのが得意なんス、だから上手い人の真似してるんスよ!」
『勉強面で使えば「無理っス」』
最後まで言うこともなく全否定されたそれはまあそうだよなと納得する
そもそも受験の際に勉強とギリギリに聞いてきたし、彼が勉強出来ないことは同じクラスでもあるしよく存じ上げている
『そういえば、借り物競争のお題なんだったの?』
「あー…言ってなかったッスね」
『何?』
ちょいちょいと手招きされたので顔を近づけると耳元で彼がこそこそと話す
「最近一緒に寝た子っス」
『絶対審判に誤解されてんな?』
耳元がくすぐったかったが、そんなことを気にしている余裕はない。この噂が広まったらとんでもないことになるだろう
審判の人が広めないことを願いながら涼太と別れるとラストのペアになると言う放送が流れた
最後は誰だろうと後ろを振り返ると、またも知った顔でなんとも言えない空気が漂う