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【黒子のバスケ】トリップしたけど…え?《1》

第70章 さよならを





征十郎が手首を掴み、透き通った手が見えてしまう

このまま逃げ切れるとは思ってはいなかったが、この短時間で気がつくかと思わず彼から視線を逸らした


「名前…これはどうしたんだ」

「…前に見たことがあるのだよ」

『…あたしは、いつかここから消えなきゃいけないみたいで…それが今日みたいなんだ』


それをどうすることも出来ないからこのまま消えるしかないんだろうと、駄々をこねることもなく受け入れる


「コーチとか相談すればいいっスかね!」

「保健室の先生とか」

「えーじゃあオレ食糧取ってこよっかー?」

「何言ってんの先生に相談しよ!」


彼らは中学生。相談するなら大人だと涼太と大輝、紫原にさつきは走り出す

何も見えないそこを潜り抜けた瞬間、何かを察した大輝が振り返る

こういう時にも野性は使えるのかと、彼はあたしが出られない理由のものに触れた


「…なんだこれ」

「ええ!?何遊んでんスか青峰っち…え、なんスかこれ」

「何か壁みたいなのがあるんだけど~」

『…あたしにもある。その壁』

「知ってたんですか?」

『さっき出ようとしたら出られなかったから』

「名前ちゃん、出られないの?」

「じゃあどうすれば名前っちが助かるんスか!?」

「…名前、先ほどより透けてないか」


彼に言われて手を見る。手はおろか袖まで消えかかっているそれに、1つ仮説が立った


『…みんないなくなったらあたしが消えるんじゃない?』

「そんな…名前ちゃん…」


さつきの目から涙が零れる
ああ、彼女には笑ってほしかったのになと触れたくて手を伸ばすが壁が邪魔をして触れることすら、涙を拭うことすら出来ない

でも彼らをこのままずっとここに居させるわけにもいかない

どうしようかと考えていると、征十郎が何か考えるようにあごに手を添える


「…緑間、黒子、ここはオレに任せてくれないか?」

「何を言っているのだよ赤司」

「緑間君、任せましょう」

『テツヤ、緑間』

「後でまたお話しましょうね、名前さん」

「待っているから、早く来るのだよ」

『…う、ん!』


2人は見えない壁を通り外に出て、先に出ていた4人を説明する
今から助かることなんてあるのかと疑問だったが、口には出さなかった






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