第121章 春と恋心
『(…2号だ!)』
ハッとテツヤ2号という誠凛が飼うはずであろう犬の存在を思いだし、テツヤが犬に見えるという幻覚を見た
あ、でもやっぱり可愛かったので良しとする
「…失礼なこと考えてませんか?」
『考えてなくもない』
「それって考えてるじゃないですか」
『テツヤが犬に見えた』
「…嬉しくないです」
『そう?』
不服そうな顔をするテツヤのポケットからバイブの音が聞こえてきて、パッと携帯を見ると荻原くんからの連絡だった
内容はまあ…近くに来てるからバスケしようぜ!的なものだ
「#NAME1#さん、あの…」
『行ってきなよ。会うこと、少ないんでしょ?』
「…はい」
再び携帯を開いて素早く返信したテツヤは先程の不服そうな表情がまるでなかったかのように口角が上がっていた
それを見たあたしも何となく笑顔になって、わくわくしているテツヤを眺めていた
「それじゃ#NAME1#さん、また明日学校で」
『うん。また明日ね』
あたしはテツヤを見送った後、透けている自分の手をただ見つめていた
『…もう少しだけ、お願い』