第70章 さよならを
そのまま佇んでいると、足音が聞こえてきた
誰か来たのかと急いで立ち上がり、手を袖に仕舞いこんで涙を拭う
やってきたのは緑間で、また彼に泣き顔を見られてしまったとへらりと笑った
「苗字…?」
『緑間、告白された?』
「…なぜ分かったのだよ」
さすがに面と向かって告白されればいくら鈍い彼でもちゃんと分かるかと笑ってると、真剣な表情をした緑間と目が合う
「何かあったのか、目が赤いのだよ」
『…寂しくて泣いちゃった。えへ』
そんな分かりやすいかと彼の瞳を見つめ返しながら、このまま消えてしまうのならば何か思い出の品が欲しいと考える
『ね、緑間。そのネクタイあたしにくれない?』
「別に構わないが…苗字らしくないな」
『そんなことないよ。代わりにあたしのハンカチあげるからさ、ほい』
ネクタイを外す彼に今日まだ使われていないハンカチを渡す
卒業式だから綺麗なハンカチを持ってきて良かったと代わりにネクタイを受け取り畳んでいると、お菓子をもらった紫原がやってきた
「何々、どーしたの~?」
『紫原も、携帯のストラップあげるからネクタイちょうだい?』
「お菓子のやつ~?」
『そうそう』
「いいよ~」
袖に手を仕舞っているため携帯からストラップがなかなか外れず困っていたがなんとか外れた
そのままストラップを彼の手のひらに乗せ、緑間のに比べてよれたネクタイを受け取る
緑間はきちんと外してるけど、紫原は外す時とか適当だったんだろうなあなんて考え込ませて、泣かないようにしながら同じものなのに全く違うネクタイに笑いかけた