第70章 さよならを
みんなで最後に体育館で集まって写真を撮ろうと言う話だったが、バラバラになった時もキセキ達だけで集まっていたので驚きはしなかった
だけどまさか同じクラスなのに体育館に集まるのかと、よく通った道を歩き続ける
そんな今日の出来事を思い浮かべながら歩いていると、去年または一昨年同じクラスだった人や、部活が一緒だった人に声を掛けられ話を交わした
そうして寄り道しながら着いたのは思い出深い1軍の体育館
まだ誰も着いていないのかしんとした雰囲気に、足を踏み入れる
『…はあ』
思い出せばこの3年間、征十郎に誘われて帝光に来ていきなり1軍マネージャーから始まり、お飾りとは言え監督まで駆け抜けてきた
引退からも皆と遊び、学び、間違いなく楽しい3年間だったと、心の底から彼らがバラバラになることが無くて良かったと考え、視界が揺らぐ
ただ今日まで一緒の彼らも高校は別々。今日までふざけ、笑い合ってきた日々を思い出し頬に水が伝った
『やっぱり、寂しいなあ』
思わず本音が出てしまい、ぽろぽろと涙が溢れてくる
こんな姿を彼らに見られたくないと一旦体育館の外へ出ようとすると、頭を強打する
なにかとおでこに手を添えながら恐る恐るもう片手を出すと、まるで壁みたいなものがそこにあった
『…なにこれ』
見えない何かに手を添えてペタペタと触っていると、ふと自分の両手が透けていることに気が付く
落ち込んでいるからとか、弱気になっているからとかそういうわけではない
自分のことを体育館から出す気がないこの壁にここがゴールなのだと教えられているような気がした
『…何で、消えなきゃいけないのかな』
呟いた質問に返事はない。床にへたり込むとスクールバックが肩から落ちる
どうせ消えるなら彼らに会う前に消えてしまいたいが、最後に別れを言いたい気持ちもある
脳裏に彼らの笑顔を浮かべながら、中身の軽いカバンを見ていた