第68章 ちゃんと考えてるよ
帰り道、カラフルな頭たちと別れてから征十郎の指示された通り彼の家に寄る
赤司家はいつ来ても緊張する。エスコートなのか開けてくれた扉を通り玄関に入った
『お邪魔します…』
「気にしなくていいよ」
『またお父さん不在?』
「お返しは預かってるよ」
『用意されてるの!?』
わざわざいいのにと考えていると去年と同じ甲冑のいる部屋に通された
動くはずがないのに動き出すんじゃないかと疑っていると椅子を引かれたので、マフラーを外して腰掛ける
『今年もアップルパイ?』
「2年連続でも良かったのかい?」
『ってことは違うんだね』
「持ってくるよ」
1人にされた部屋で甲冑とにらめっこしていると、去年に比べれば小さな箱を持った征十郎が戻ってきた
向かい側に行き、箱から樹木の年輪のようだが真ん中に穴が空いているそれをお皿にのせる
「どうぞ」
『なんでバウムクーヘン!?』
「作ったんだ。昨日」
『ねえこの会話去年もしたよね?』
デジャヴかと思うがそれより征十郎がバウムクーヘンを作ったほうが驚く
小さなそれが皿に2つ乗せられており、売っているものと言ってもいいくらい綺麗に生地が重ねられていた
一緒に紅茶も用意されて来たので、大輝からもらったセットを1つ出しても良かったかなと空気が読めないことを考える
「一緒に食べようか」
『うん…そうね?いただきます』
お皿に一緒に乗っていたフォークを使い一口サイズに切り、運ぶ
しっとりした食感と甘い味が広がる。本当に彼が作ったんだろうかと疑問に思いながら飲み込んだ