第9章 夏季試験
全中を優勝した帝光中学バスケ部の新しい主将は虹村さんが指名され、新体制が始まる
副主将に征十郎が抜擢されどよめいていたが、この先を知っているあたしに驚くこともなく、征十郎に「おめでとう」だけ伝えておいた
そして今日、なぜだか知らないが毎回虹村先輩と一緒に3年生が抜けた分2軍から1軍にあがってくるので偵察に行けと命令が下る
『夏季試験が1番上がれるチャンスですもんね、イケメンいるかなー』
「うるせえ、そんな理由で見に行くんじゃねえんだからな」
『わかってますって』
流石に全中までの練習はマネージャー業も忙しかったのであくびをすると、チョップが飛んできた
『痛い!手を出す前にまず口で言ってください!」
「部員が練習中なんだからぼさっとすんな」
『…すみませんでした』
あくびした自分が悪いことは分かるが、怒る前に口で言ってくれても良いじゃないだろうかと口をとがらせる
そこから2軍の上がってくると言われている選手を観察したが、特に知っている人はいない
「#NAME2#、3軍のドリンク作り追い付かねえらしいから手伝ってこい」
『人使いが荒いことで』
「ああ?」
『ジョーダンデス』
「終わったら1軍の分も頼むぞ」
『はい』
駆け足で3軍の体育館に行くと、確かにマネージャーが足りていなかった
空になっているスクイズを集めかごに入れ、外に出てドリンクを作って戻ろうとすると、行きに比べて重さがだいぶ増している
何キロあるかわからないが普通の女子では恐らく持てないだろう。たくましいあたしは休みつつもまとめて運ぶ
『…あ』
3軍の体育館前に辿り着くと力尽きた黒子が倒れている
9月とは言えまだまだ残暑が厳しい季節、さすがにこのまま放っておくわけにはいかない
カゴが重いのでそろそろ近づくと、倒れるというより寝ている状態だったことが分かる
高校に比べて幼い黒子の寝顔に、思わず写真を撮ってしまった