第66章 本当は
「名前ちゃんは恋って感情を無かったことにしたいわけ?」
『うん』
「それは無理じゃね?」
『…やっぱ無理かなあ』
「だって名前ちゃん泣いてるときすぐに感情消せる?」
『消せない、けど』
「悲しいって感情よりも染み付いてるから消せねーんだよな」
『染み付いてるから?』
「ずっとそいつのこと、好きだったんだろ?」
『認めたくないけど』
「ハハッそんな簡単じゃねーよ」
『和成さ、あたしのこと好きって言ってくれたよね』
「今も好きだけどな」
『…ごめんね、それなのに恋愛相談しちゃって』
「うーん…まあその気持ちにさせんの、オレがしたかったんだけどな
名前ちゃんに好きな奴がいんならしょうがねえ」
『キザだな~』
「ま、名前ちゃんが幸せならそれでいいわ」
『…もう十分幸せなんだけどね』
「なんかばあちゃんみたいだな!」
『なんだって?』
「ジョーダンだって!悪い悪い!」
笑う彼の意見には同意する。あたしも征十郎が笑っているならそれでいい
例え彼女が出来たとしても彼が幸せなら受け入れようと、立ち上がり違和感がある右手が見えないよう伸びをする
「次会えるのいつかね、来月?」
『春休み暇だったら会おっか?』
「えー名前ちゃん忙しそうじゃん」
『今のところ予定は何もないけどね』
「マジ!じゃあ妹交えて遊ぶか!」
『妹まだ学校あるでしょ』
遊べたら楽しいだろうと考えながら立ち上がった彼と一緒に帰路を歩く
そういえば彼は緑間が同じ高校に行くことをもう知っているんだろうかと疑問に思ったが、わざわざ言うつもりはない
4月になってからのお楽しみにしようと考えながら後ろを振り返る
夕日によって道に落ちる自分の影は、一部が欠損していた