第66章 本当は
「…くれるのか?」
『毎年あげてるでしょ』
「そういえばそうだね、毎年もらっているよ」
『忘れてないくせに』
強がって出てくる言葉はいつも通りで、目の前に居る征十郎も同じくいつも通りだった
これでいいと考えながら、彼が受け取るのを待つ
「礼を言うよ」
ふわりと笑った征十郎はあたしの持っていたチョコを取る
その際に指が触れ、さらに動悸が早くなり緊張してしまうが頬が赤くなるのは避けたいところ
彼が持つ可愛らしくラッピングされたチョコと違いシンプルなあたしのチョコを眺める彼に、先ほど触れた指を後ろに隠した
「…名前さん?」
『あ、嫌がらせに血混ぜてやれば良かったなーって後悔してた』
「絶対にやめるのだよ!」
『痛いしやんないよー衛生的にも無理』
キセキ達に止められながらあたしはもどかしい感情を隠す
ケラケラ笑っていると涼太がまた可愛くラッピングされた箱を掲げながら戻ってきた
「またもらっちゃったっス〜」
「名前ちんがくれたチョコ、これなーに?」
「無視!?」
『ダリオール オ ショコラだよ』
「だ、だり…?」
『ダリオール オ ショコラね』
フォンダンショコラのミニバージョンみたいなものだと付け加えて説明するが、フォンダンショコラを分かってない人が何人かいて説明を諦めた
「相変わらず名前は器用だね」
『でしょ、味わって食べてね』
「後でみんなで食べようか」
「…血」
『入れてないから』
「あ、先生来ましたよ」
「座るか」
「そうだね~」
良いタイミングで先生が来て席へと戻り、机の上にあったチョコを軽くなった紙袋に移す
突っ伏そうとすると少し前にいるさつきがニコニコとこちらを見ていることに気がつき、何もないよ意味を込めて顔の前で小さく手を横に振った