第66章 本当は
「黄瀬、呼び出しだ」
「うっわまたっスか〜、行ってくるっス」
「HR前には戻って来るのだよ」
征十郎が帰ってきて可愛らしくラッピングされた箱を大量に持っていた
気合が入ったそれはきっと彼を想う女の子からなんだろうと、こちらに歩いてくる彼を見つめる
「おはよう名前」
『おはよう。告白かな?』
「勘が良いね」
『いやそんな可愛いチョコ告白しかないでしょ』
軽く笑いながら征十郎にチョコを渡すため自分の紙袋から取り出してと渡そうと振り向くと、彼の手があたしの目元を擦る
何事かと驚いていると彼は周りに聞こえないよう小声で話しかけてきた
「目元が赤いね、泣いたのかい」
『…いや?チョコ作りで寝不足だからかな?』
「そうか」
彼に昨日さつきに打ち明けた想いをバレてるんじゃないかと不安になる
いや、分かられてても別にいい。隠し通せばいいだけだ
だが昨日認めてしまったせいか、渡そうとした瞬間に動悸が激しくなり緊張していることが何となく分かる
それを表情に出さないように気をつけながら、彼の名前を呼ぶ
『征十郎』
「…どうしたんだい?名前」
『征十郎だけチョコ渡してないから、はい。あげます』
「なぜ敬語を使っているのだよ」
「血の話聞いたからじゃないの~?」
「ちょっと怖いもんね」
『混ぜてないわさつきが証人』
「赤司のに血を入れるほど勇気ある奴いねーだろ」
横で震えていた緑間と大輝も復活して普通に話しているのを耳にしながらあたしは彼にチョコを差し出す
その分征十郎に近付き、動悸が持久走を終わったあとみたいだと頭の片隅で思ったがすぐに忘れるほどどうでもいいことだった