第66章 本当は
「バスケ部一同からの苗字先輩へ逆チョコです!」
『え?あたし?ありがとう』
「はい!すみませんどれがいいのかわからなくて、大きいの選んじゃいました」
『うん。皆で分けるね。これお返しに皆で食べて』
「手作りですか?」
『え、うん』
「苗字先輩の手作り!?絶対美味い…」
「…中学入って初めて女子からもらいました!」
『むなしいな』
人数分ほどのチョコを紙袋から取り出し渡すと中学入って初めてもらったと言われ、それが自分でいいのか疑問になるが喜んでるしいいんだろう
チョコ大量に作っておいて良かったと自分に感心しながら、今のところ一番大きい箱なので一番下にして持つ
「苗字先輩のそれ、全部貰い物ですか?」
『うん。女子からのね』
「あ、オレの隣の席の奴渡すっつってた」
『…なぜ?』
「運動できて勉強できて、監督もやって憧れとしてるらしいですよ」
『あー良かった。恋愛対象として見られても困るよねー…』
「分けてください」
『あげないよ』
朝練おわってすぐ来てくれたのだろうと思いながら「じゃ、ありがとう」と再度お礼を言って部活の後輩と別れて再び歩き出そうとすると呼び止められ、足を止めた
「待ってください!」
『え?何?』
「これも、個人的に受け取ってください!」
「お、オレも」
その2人に続いて何人かがチョコを差し出してくる
既製品だがわざわざ今日のため買いに行ってくれたんだろうと後輩たちが可愛く見えてくる
なんだなんだあたし急にモテ期じゃないかとはにかみ、彼らに笑いかけた
『…ありがと、嬉しい』
1人ずつ「ごめん上に乗せて」と持っているチョコの上に乗せてもらい、よいしょとバランスを崩さないよう歩き出す
すれ違う人が皆チョコの量に驚いているが、1番驚いてるのは間違いなく自分だと思いながら今度こそ彼らに別れを告げた
「…苗字先輩、ああやって笑うとまた可愛いんだな」
「はー…卒業してほしくねぇなあ…」
チョコを落とさないように歩くことと支えることに集中していたあたしは、部活の後輩達が呟いていた言葉は耳に入らなかった