第66章 本当は
なんだかいつも隣を歩いている赤い髪がいなくて少しだけ寂しい気がするが、4月からはこうなるんだ
これを当たり前にしなければと考えながら足を進めていると携帯から着信音が鳴る。桃井さつきと光っていた
『どうしたのさつき』
「名前ちゃん一緒にバレンタインのチョコ作ろうよ!」
『…バレンタイン?』
征十郎の合格発表で頭がいっぱいになっていたが確かに今は2月、世間はバレンタインの季節だと言われて気が付いた
それより彼女はなんて言っただろうか、一緒に作ろうと聞こえた気がしたんだが空耳だろうかと現実逃避していたがもう1度言われてしまう
「せっかく今部活もないし一緒にチョコ作ろ!」
『…え、さつきが作るの?』
「違うよ!一緒に作るの」
そう言われて合宿の時の倒れていった彼らの事を思い出す
またあの時みたいに一緒に作りたいのだろうか去年までは既製品でいいよと言うと笑っていたのにどうしたんだろうと考えていると、彼女からの本音が出てきた
「中学最後くらいテツ君に手作り渡したいの!お願い!」
『…なるほどねえ』
「やっぱりだめかな…青峰君にもやめとけって言われちゃって」
電話越しでも彼女のしょんぼりした表情が想像できる
そういえばスイーツバイキングのチョコファウンテンは問題なかったし、それなら面倒見れるかもしれない
『いいよ。作ろうか』
「ほんと!?」
『うん。13日学校終わった後一緒に材料買いに行って作ろ、ただしちゃんと言うこと聞いてね』
「うん!もちろん!」
しかし本当に聞いてくれるんだろうかと料理レベルは同じくらいだった誠凛のリコさんを思い出す
まあダメだったとしても試合も練習もない
倒れても問題ないかとカラフルな頭たちを思い出して電話を切った