第65章 初詣で合格祈願
「名前ちゃん、着物着ない!?」
『…明けましておめでとうございます。お母さん』
「おめでとう。着物着ない!?」
『…1回着物から離れてもらえませんか』
年が明けてお正月がやってきた
起きてリビングへと階段を下りた瞬間、待ち伏せしていた雪さんが着物を勧めて来ており、反応に困る
「名前ちゃんに似合うと思うんだけど…どうかしら?」
『着てほしいってことですか?』
「その通り!見たいなー名前ちゃんの着物姿」
『…分かりました。着ます』
「やった! じゃあそこに座ってねー」
『はい』
テンションとノリが相変わらず若いなあと雪さんにされるがままに化粧、ヘアセット、着付けをされていく
途中眠りそうになってしまったが何とか持ちこたえ、完成した姿はオレンジの髪なのがもったいなかったが間違いなく綺麗だった
やり切ったという表情をする彼女が扉から出ていく隙に姿見の前で回っていると、誰かを連れて戻ってくる
雨さんだろうかと振り返ると、赤い瞳と目が合った
「綺麗でしょ?征十郎君」
「はい。いつも綺麗ですが段違いに」
『え、なんで征十郎!?』
「バスケ部の子達と初詣行くんでしょ?行ってらっしゃい」
『え、あ、そうなの?』
「ああ、行こう」
『じゃあ…行ってきます?』
状況がイマイチ読み込めなかったが、とりあえず迎えに来てくれたらしい征十郎についていくことにする
なぜか用意されている荷物を持って玄関で草履を履いた
振り返ると雪さんがニコニコと手を振っており、手を振り返してから扉を閉める
こちらから見えなくなるまで彼女はその動作を続けていた