第64章 お呼ばれクリスマス
『プレゼントにケーキまで頂いてしまって…今日はありがとうございました』
「こちらこそ、忙しい中来てくれてありがとう」
「送ってくよ」
「そうだね、頼むよ征十郎」
『もう拒否しません』
「また来てくれ名前君、良いお年を」
急に呼ばれた名前に思わず目を見開く
いつも橙崎の娘なんて呼ばれていたから違和感があったが、歩み寄ってくれてるんだろうと勝手に口角が上がってしまう
『また来ます。良いお年を』
扉が閉まるギリギリまで立っていた彼の姿が自分の母親の姿と重なる
もうすっかり素敵な父親だなと思いながら外に出ると既に暗くなっており、肌を刺す空気が冷たい
昼間はまだ暖かったなと同じ道を歩いていると、隣にいる征十郎がケーキボックスを持ってくれた
「父さんから何をもらったんだい?」
『もらってすぐ開けるのも失礼かと思って開けてないんだよね、開けていい?』
「いいんじゃないか」
『えーじゃあ開けよ。失礼しまーす』
リボンを解き、破らないよう丁寧に包装紙を剥がしていくと、出てきたのはスリムなボールペンだった
見るからに高級感が溢れているそれに、元々寒いのに足の先まで一気に冷えた感覚がする
「何がいいか悩んでいたよ」
『…もっとなんか、安いもので良かったんだけど』
「嫌だったかい?」
『いや嬉しい。すごい嬉しいけど…夕飯誘ってもらってプレゼントまでもらって…うん』
「気にしなくていいよ。父も楽しみにしていたから」
『そう?いつもと変わらなかった気がするけどな』
いつも通りの様子だった気もするが、間違いなく以前より雰囲気は柔らかくなっている
こんな変わってくれると当初は思っていなかったのできっと2年前のあたしが見たら驚いてしまうだろうなと、腕を伸ばした