第64章 お呼ばれクリスマス
「昨年言っていたやりたかったことと言うのは、帝光の監督で合っていたかな?」
視線を上げる。真剣な表情をしている征十郎のお父さんに去年やりたいことがあり後ろ盾が欲しいと相談させてもらったことは覚えていた
この質問にさすがに曖昧な返事は出来ないなと、すべて見透かされているんじゃないかと不安になる瞳を見つめ返す
『はい。あくまで目的のための手段でしたけど』
「結局力添えはいらなかったみたいだね」
『…実は脅しに使っちゃいました。赤司と橙崎を敵に回すんですか?って』
「効果はあったかな」
『力添えがなかったら退学になってたかもしれません』
「…君を退学にする方がおかしいだろう」
『小娘1人の脅しなんて退学で十分だと思ったんじゃないですか』
言ってからまるで突き放してしまったみたいだと後悔しながら、誤魔化すため少し温くなったシャンメリーを口に付ける
心地良いとは言えないシャンメリーが喉を通りそのまま飲み込み視線を戻すと、彼はフォークをケーキに刺しながら笑っていた
「それで全中優勝まで導いたんだ。大したものだよ」
『いえ、全中優勝はあたしの中では副産物なので』
「副産物?」
『はい。でも結果としては大満足です』
「…ちなみに何がしたかったのか、聞いてもいいかな」
まさか興味を持つと思ってなかったので、驚いて瞬きを何回かする
ここまで言って「内緒です」というのもおかしいだろう
どう言えばいいのかこの一瞬で色々と考えたが、出てきた答えは1つだけだった
『楽しい学校生活を送りたかったんです』
嘘1つない心からの言葉に思わず笑顔が溢れてしまう
その笑顔のせいなのか、回答が意外だったのか分からないが彼は目を丸くした後、「そうか」と呟いて笑っていた