第64章 お呼ばれクリスマス
「橙崎の娘は誠凛に行くそうだったね」
食事がメインなのか会話がメインなのか分からないが、パーティーの最中に征十郎のお父さんからそんなことを聞かれる
こちらから話していないことを知っているということは、教えたのかと赤い髪の彼を見ると野菜を綺麗な仕草で食べていた
『そんなこと話してるの征十郎』
「話題に上がってね」
「他の高校は視野にも入れなかったと聞いているよ」
『視野に入れなかったわけじゃあないんですけど…』
思い返せばぼんやりと、まあ主要校のどこかに行こうかなという考えはあった
たまたま入院した時に誠凛の人に会ったのでこうなったが、他に行く選択肢もあったんだろうと当たり前のことを考える
ただ行くならシナリオが1番分かっている誠凛が最善だっただろう
返事に歯切れが悪いからか、特に追及せず彼の父親はフォークを置いた
「征十郎と初めて離れるんじゃないか」
『…いなくても平気ですよ』
「そんなことない。今まで一緒だった分心細いよ」
『どの口が言ってんの?』
思わず出てしまった本音と言葉遣いに口元に手を添える
恐る恐る彼の父親に目線を向けるが気にしていないらしく、軽快に笑っていた
「征十郎が京都に行っても、遊びに来てくれ」
『1人で来るのはー…まだちょっと…』
「まだ受かってないよ」
『いや受かるでしょ』
先ほど模試の判定もA、オール5で勉強も出来るスポーツ推薦がどうして落ちる可能性があるのかと思いながら飲み物を口に運ぶ
受かってしまえば彼は京都に行ってしまうのかと、またも当たり前のことを考えながら面接のように飛んで来る彼のお父さんの質問に帰しながら雑談をしつつ食事を進めた