第64章 お呼ばれクリスマス
いつも通される甲冑のある部屋に案内されると、彼のお父さんが待っていた
会う時は大体スーツのため、カジュアルだが雰囲気の変わらない彼に勝手に安堵する
これでサンタの格好なんかしてたらどうしようと最悪の事態を想定していたため、いつも通りで良かった
「橙崎の娘、今日は来てくれてありがとう」
『こちらこそお招きいたあきありがとうございます。これ母からです』
「呼んだのはこちらなのにすまない」
『いえ、前回手ぶらでお邪魔したので…』
雪さんから預かった手土産を渡すと、そのまま受け取ってもらえた
断られなくて良かったと胸を撫でおろしながら座るよう促される
席についてテーブルを見るとテレビでしか見たことないような鳥の丸焼きが出て来たので思わず目を丸くしてしまった
「気にせずたくさん食べてくれ」
『…ありがとうございます』
「飲み物、シャンメリーでいいかい」
『わざわざ用意したの?』
「こういうのは雰囲気かと思ってね」
一見お酒に見えなくもないそれをグラスに注がれ、彼の父親の乾杯の挨拶でグラスを掲げた
さすがに鳥の丸焼きには手を出せないなと思っていると、横からお手伝いさんが良い感じに切り分けてくれる
お礼を言ってから口に入れると、ほっぺが落ちるとはこういうことなのだろう。とても美味しかった
こんな良いものを食べてしまっていいんだろうかと葛藤しつつも、次の食べ物に手を付けた