第8章 夏祭り
寝る準備が整い再びリビングに行くと部屋の中に雪さんの姿がない
布団の用意をしているのだろうかと振り返るとちょうど彼女が戻ってきた
「征十郎君、布団客間に用意してあるから」
「ありがとうございます」
「少し早いけど寝ちゃいなさい」
2人で雪さんに「おやすみなさい」と挨拶をしリビングを出る
征十郎も客間に行くだろうと同じ挨拶しようとすると彼が先に口を開く
「寝る前に少し、話してもいいかい」
『いいけど、眠いから少しにしてね』
「なら名前の部屋にするかい?」
『…え?まああたしの部屋でもいいけど』
「じゃあ名前の部屋にしようか」
彼が部屋に来るのは久しぶりだ。年頃の異性を部屋に入れていいのか疑問だけれど相手は征十郎だし、同じ屋根の下に雪さんもいる
また目を擦りながら椅子に座ると彼もベッドに腰掛けた
『なんか話すことあったっけ?』
「いや、オレが聞きたいだけなんだが」
『うん?』
「なんで泊めてくれたんだい?」
『…え?雪さんが言ったから?』
「雪さんが言ってなかったら帰してたか?」
『うん。流石に保護者の許可なく泊められないよ』
「そうか」
『あと征十郎の様子がおかしかったから、家帰さない方がいいかなって』
「…おかしかった?」
『おかしくはないね、違和感があったかな?
あとお父さんの話した時少し表情曇ったこととか、そこが気になって』
「…そうか」
それだけだろうかと考えていると沈黙が続く。段々と瞼が落ちてくる感覚に抗えず半分、いや8割寝ている状態だが彼は話を続ける
空返事を続けるあたしに彼も気が付いたのか、話が止まった
「寝ようか」
『ん』
「…聞いてないだろう」
『うん』
身体が浮かぶ。もう眠たい方が勝っているので下ろしてと騒ぐ気も起きない
そのままベッドに降ろされ布団をかけられる。頭を撫でられる感覚がしてその心地よさに完全に目が閉じる
「今日は楽しかったよ。ありがとう」
彼はそう言って出ていったが眠っていたあたしは後半の記憶をほとんど覚えていなかった