第8章 夏祭り
お風呂を出て髪を乾かそうとすると先ほどまであったはずのドライヤーが見当たらなかった
さっき使ったばっかりなのにそんなことあるか?ともう1度探すがやはりない
どこに行ってしまったんだとリビングに戻ると、征十郎と雪さんに挟まれているテーブルの上にドライヤーが置かれていた
「おかえり、ゆっくりできた?」
『はい…いやドライヤーがなんでそこに?』
「名前の髪、乾かそうと思って」
『なんでそうなった?』
立ち上がった征十郎の服装がパジャマに変わっていることに気が付いて彼の家から荷物が届いたのかと察する
浴衣に引き続き見慣れない格好だなと思っているとそのまま彼がソファの後ろに立ち、背もたれを叩く
『座れってこと?』
「ああ」
全くそれなら座れと言ってくれればいいのにと、ソファに座ると背後にいる彼はドライヤーを使いあたしの髪を乾かし始めた
何か話すべきなのかとも思うがドライヤーの音のでかさで上手く声が通らないのは美容院を経験してよく理解している。することもなくぼーっとしていると段々眠気が襲ってくる
そんな睡魔と戦っていると耳元でしていた大きな音が止まり、目が覚めた
「終わったよ」
『ありがとう。疲れたでしょ』
「疲れてはないが…寝てたかい?」
『ちょっと眠気が襲ってきた』
まだ少し眠たい眼を擦りあくびをすると雪さんがこちらを見てニコニコしていることに気が付く
浴衣を着た時も喜んで写真を撮っていたしこの仲良くしている光景が彼女にとって楽しいんだろうか
「2人とも寝る?」
「名前は寝た方がいいんじゃないか」
『うん。なんか眠気来てる』
「征十郎君の分のお布団用意しとくわ」
「いえ、自分でやります」
「いいから、歯磨きしてらっしゃい」
完全に子供扱いされていると思いながら征十郎に新品の歯ブラシを渡し並んで歯を磨く
眠気が来ているので頭が働いていないがこの状況は何なんだろうか
わざわざ並んで歯を磨く必要はあるのか疑問だが今更どこかふらふら歩くのも変だと、並んだまま歯磨きを終えた