第64章 お呼ばれクリスマス
『お邪魔します…』
「父はいないよ。仕事が終わり次第来るそうだ」
『…そうだよね、仕事だよね』
学生は冬休みだが世間は年末、忙しい頃だろうとまだ顔を合わせなくて良いことに安堵の溜め息を吐きながら彼の家の中に入り、そのままリビングへと向かう
大きなテレビを前にして多忙な彼の父親はこれを使って見ることはあるんだろうかと考えつつ上着を脱ぐ
まだ温もりが残るそれとマフラーを征十郎がスマートに奪い取り、カバンとは別の手土産が入った紙袋に彼の視線が刺さった
「荷物も預かろうか」
『ああ、これは征十郎のお父さんに手土産だからいいよ』
「…気にしなくて良かったんだが」
『あたしじゃなくて、雪さんが持ってけって』
彼女に渡された手土産を邪魔にならないように端に置き、こういうのは慣れた人に捜査してもらうのがいいだろうと甘える
立ったまま征十郎が操作するテレビ画面を景色のように見ていた
「何か飲むかい?」
『何でもいいよ』
「紅茶でいいかな」
『うん。ありがとう』
『今日見る試合どこの?』
「洛山だね」
『偵察?』
「見るなら知ってる学校がいいだろう?」
あたしが行く予定の誠凛はウィンターカップに出場していない。それならば彼が進む洛山を見るのが間違いないだろう
前の試合が予定より早く終わったのかダイジェストが流れているが、今のところ知っている選手はいない
洛山なら無冠の五将の3人がスタメンにいるだろうかと、探しながらダイジェストを眺めた