第62章 たまには中学生らしく
「お疲れ様。飲み物いるかい?」
『うん。ありがとう』
「桃井もどうかな」
「私の分もあるの?ありがとう赤司君!」
「おいオレらにそんなのなかったじゃねえか」
「買ったら当たったんだよ」
それが本当か嘘か分からないがこれで断っても彼の荷物になるだけなのでありがたく受け取る
そんな大した運動をしたわけじゃないのだが、水分を口に入れると動いたせいか喉を鳴らして飲んでしまった
『意外と疲れるね』
「ねー、バットに振り回されちゃった」
飲み終えたペットボトルをゴミ箱に捨て、みんなで下りると女性の声が聞こえてくる
なんだろうと視線を向けると大きな瞳の女性と目が合う
肌が白く目が大きい彼女はピンクや白の機械をまとう布にプリントされていた
ああプリクラかと、あまり縁のないものから視線を戻すとさつきに腕を引っ張られる
「そうだ!みんなでプリクラ撮ろうよ!」
「前みんなで撮りましたね」
「そうなのかい?」
「テスト前の時っスよね!懐かしいなー」
涼太の発言にさつきが「しーっ!」と口元に人差し指を添える
察しがいい彼がどこまで気が付いているのか知らないが、あの日のことは征十郎に内緒なんだと知っている
本題のさつきの意見には反論がなく、数ある機械のどれがいいともないのか先頭を歩く彼女についていく
そんなあたしもこのメンバーでプリクラを撮るのは初めてだと同じようについていった
「名前はプリクラ撮ったことあるのかい?」
『…あるような、ないような』
「なんだよそれ」
「ほらみんな入って!撮るよー!」
いつの間にお金を入れていたのか、さつきに押されカーテンをめくり真っ白な空間へと入る
高い女性の声とBGMが流れているこの少し狭い箱の中、全員が入るのかが不安になった