第62章 たまには中学生らしく
そこから何度か動かしたがまいう棒はいいところで必ず止まってしまう
まだ3桁で収まっているがそろそろ決着をつけてしまいたい金額だと、こちらもハラハラしてきた
「あとちょっとなんですけど…」
「もう少しアームに力入ってくれれば…!」
「なるほどな。これは難しいのだよ」
テツヤの攻め方は良かったがアームに力が入るのは確率だと聞いたことがある
こればっかりは技術どうのこうのの話じゃないなと考えながら、隣に立つ赤い髪の肩を叩いた
『征十郎』
「なんだい?」
『決まってるじゃん。1回行ってみよ』
彼がフッと笑う。どうせ彼なら確率無視してアームの力を入れるなりなんだりするはずだ
その考えが分かったのかテツヤも頷き、操作台の前から横にずれてくれる
征十郎は財布から先ほどと同じく100円玉を取りだし、機械に入れた
「夏祭りの時も、緑間のためにこんなことしたね」
『安心と信頼の征十郎なので』
「CMか何かかい?」
『事実だよ』
「…確かにあの時も赤司は特賞と1等を当てたのだよ」
「え?それ何回やって?」
「2回だ」
「2回で特賞と1等…ボクが店員だったら泣いてるかもしれません…」
『いやお店の人呆気に取られてたよ』
懐かしい記憶を思い出していると、征十郎が降下ボタンを押したのかアームが下に落ち始める
ビニールに詰められているまいう棒は引っ掛けるところも刺すところもない
単純にどれだけ近づけられるかが勝負だと思ったその時、見事にアームはまいう棒を掴む
「あとは落ちなければ…!」
掴んだまま上がっていくがもうそこまで戻らなくていいよ!ってところまでアームが戻る
まいう棒を掴んだまま元居た場所まで戻ったソレは横に移動しそのまま緩め、穴に落とした