第61章 退院祝いパーティー
最悪アイスは食べれなくてもいいかと目当てのケーキを取り終えて戻ろうとすると、カップアイスを手に持つ緑間と鉢合わせる
『緑間はなんのアイスにしたの?』
「あずきだ」
『あー、そうだよね、そうだよねー』
「なぜ2回言ったのだよ」
『なんとなく』
あずきのアイスがあるのかと驚きながらも彼が和風なものを選んでいることに納得しか行かなくて、自分に当たり前だと言い聞かせるつもりで、いやほとんど無意識で出た言葉だった
用は済んだし彼は去るだろうと思っていたがこちらを見たまま動かない
ならば先に行こうかと足を動かそうとした瞬間、緑間はまた喋り始めた
「苗字も食べるか?」
『カチカチに凍ってる?』
「…そうだな、柔らかくはないのだよ」
『じゃあ先にとって柔らかくなるまで溶かしておこうかな』
取りに行こうと周りを見ると緑間が来た方向へと戻る
ついて来いということだろうかと彼の後を追いかけていくと、アイスコーナーに辿り着いた
『わざわざありがとう』
「もう1つあずきが欲しかっただけだ」
『うん?』
彼のツンデレは今に始まったことじゃない。デレられた覚えがあまりないが
色んな種類のアイスが用意されており、自分で掬っていくのは小さい頃憧れたものだ
それが出来るなんて嬉しいなという気持ちと、どのアイスを食べようかという気持ちで心が躍る
『えー、なんか種類あって迷っちゃうね』
「オレのおすすめはあずきなのだよ」
『見れば分かるって』
カバーを開け、アイスディッシャーを手に取る
せっかく種類があるので全種類少しずつ取っていき、アイス1個分になるかならないかをカップに入れた
『緑間のあずきもやろっか』
「いいのか」
『うん。カップ取って』
受け取ったカップにアイスを入れる
なかなか綺麗に出来た丸い形に高校生になったらアイス屋さんでバイトしてもいいんじゃないかと一瞬考えたが、バスケ部にそんな余裕はないだろう
『ほい』
「礼を言うのだよ」
『別にこのくらいいいよ』
あずきを2つ食べお汁粉を飲みどれだけ好きなんだろうと思いながら、いや彼は中学入学前からおは朝を信仰し今も未来も信仰している男だと気が付く
きっと好きなものはいつまでも好きなんだろうなと考えながら、彼と一緒に席に戻った