第8章 夏祭り
「私に?」
『はい。もう夕飯食べちゃいました?』
「ううん。作業してたから何も食べてなくて、助かるわ」
「何してたんですか?」
「ちょっとね」
濁されたあたり聞いてはいけないのかと察し会話を止める。ちょうど家が見えてきた
安心したのか無意識に張っていた緊張感が抜け息を吐くと、一緒に何か変な感覚がする
『あ』
「どうしたの?忘れ物?」
『下駄すっぽ抜けました』
「…気を付けろと言っただろう」
『申し訳ない』
片足を上げているとまた下駄を拾いに行って履かせてくれる。今日何度目かと笑いながらお礼を言い家にたどり着いた
浴衣を借りているので征十郎も家に上がり、リビングのテーブルに持ってくれていた食べ物を置く
「征十郎君、シャワー浴びていく?」
「いえ、流石にそこまでは」
『汗かいたでしょ、浴びてけば?』
「なんなら泊まっていってもいいのよ」
「…流石にそこまでは」
「髪も洗ってっちゃって、湯船も入ってって」
『家帰ったら寝るだけにすれば?』
なんだか足の裏の感覚が変な感じがすると足の裏を見るが何の変化もない
下駄を履いた後独自の感覚だと笑いながら征十郎をお風呂場まで連れて行く
『服持ってきとくね』
「本当にここまでしてくれなくていいんだが」
『まあいいじゃん、入っていきなよ』
そのまま扉を閉め彼に拒否権がないことを理解させる
だいぶ無理やりだったが久々の遊ぶ機会だ。たまには息抜きさせてあげたいと考えながら彼が来るとき着ていた服を雪さんから受け取り、脱衣所に置いておいた