第61章 退院祝いパーティー
「良かったら鏡でも見てほしいっス!」
『うん。片付けるついでに見るよ』
使ったものを涼太から受け取ろうとすると「一緒に片付けに行く」と申し出を受けたのでありがたく一緒に洗面所へ向かう
写真ではなく鏡に映る自分の珍しい髪型に、何回かまばまきをした
『大体下ろしてるかポニーテールだから、変な感じ』
「毎日アイロンかけると髪が痛むって言うから、むしろそれくらいがいいかもしれないっスね」
『ずぼらなだけだけど』
それでも何もしなくても問題ないこの髪には感謝している
朝起きてブラシを通せばサラサラになるし、寝ぐせがついていてもささっと直せばいつもの状態に戻る
枝毛なんてあるんだろうかと思いながら、来た道を戻った
「そろそろ行く?」
『うん。そうする?』
「赤司っちと黒子っちとか早そうっスもんね!」
『いやどうせ遅れてきそうなのいるからギリギリでもいいんだけど…』
まあいいかとあらかじめ用意していたカバンを持つと、先ほどあたしがしたように涼太の目が何度かまばたきする
「名前っちその格好で行くんスか?」
『え、うん』
「せっかく髪可愛くしたんだしお洒落してこ!」
『えー…今から服装変えるの?』
別に今の服装でもいいと思うんだけどと自分の姿を見る
無難な格好ではないだろうかと思っているのだが彼はそうでもないらしい
「オレとデート行ったときの服は?」
『え』
「まさか捨てたんスか!?」
『いやあるよ。あれ以来着てないけど』
「じゃあ今着よ!ね!」
『う、うーん、そうね』
彼に押されて仕方なく自分の部屋に戻り、もう1年以上経ってしまったあの時の服を引っ張り出す
あんまり柄じゃないんだけどと着てみると髪型とマッチしていて意外と良いかもしれない
そのまま涼太の待つリビングに戻ると、彼の表情が明るくなる
「やっぱ似合ってる!ほら!行こ!」
『…そうね』
たまにはいいかとそのまま珍しい服を着て一緒に家を出る
目的地に着くまでの間に、彼が何度あたしを見てニコニコ笑っていたのかは数えられなかった