第61章 退院祝いパーティー
「名前っちの髪いじれて嬉しいっス!迎えに行くって言って良かった!」
『それは良かった』
髪を梳かしていくが今のところ引っ掛かりがなくスムーズにブラシが通っている
引っ掛かったところで何があるわけではないのだが気になるそれに、引っ張られたら痛いしと考えながら彼にされるがまま頭を貸し出す
「名前っち、クリップちょーだい」
『ほい』
「もう1個!」
『スプレーもいる?』
「あったら助かるっス!」
彼に指示されるまま必要なものを前を向いたまま渡した
雑談を交わしている内に髪が何かに巻きつけられ温度があがるのを感じる
「熱くないスか?」
『うん。大丈夫』
「普段髪巻いたりしないんスか?」
『朝練あって出来ないよ』
「もうないじゃないスか」
『でも今更やろうとか思わないかな、その分寝たいかも』
「名前っちらしいっスわ」
雑談をしながら彼は同じように髪を巻いていき、その作業が終わると今度は髪を編み始める
好きにしていいとは言ったがこれでとんでもない髪型にされたらどうしようと彼がするはずのないことを心配し、気が付けば作業が終わったようで後ろにいる涼太から小さく「よし」と声が聞こえた
「出来たっス!見てみてかわいいっスよー!」
『自分の頭をどうやって見ろと』
「えーじゃあオレが写真撮って見せるっス」
首から下はまだ見えるので巻かれているのでふわふわしているのが分かる
ただ編まれていた後頭部はどうなっているのか分からない
涼太がカメラを起動し「撮るっスよー」と言うので動かないように意識しシャッター音が鳴るのを待った
「ほら!可愛いでしょ!」
『本当に涼太は器用だなあ…』
「えへ、我ながらいいできっスわ」
映っていたのは編み込みでハーフアップされている自分の姿だった
出来なくないが自分ではやらないであろう髪型に驚きながら、後頭部を触りはにかんだ