第60章 訪問と進路
何事かと引っ張った彼を見ると、後ろから自転車があたし達の事を抜かしていく
ただの自転車かと一気に跳ねた心臓を落ち着かせるためにも息を吐き、距離が近い征十郎から離れる
『ごめん全然気が付かなかった』
「最近ぼーっとしているね」
『そうかな、そんなことないと思うけど』
「今だって自転車に気が付かなかったじゃないか」
『…普通に今まで自転車が通る時間に帰ってなかっただけじゃない?』
今までは日が落ちてから帰っていたから自転車のライトで気が付いていたんではないか、いや十中八九これな気がする
あと理由があるとすれば、全中が終わり気が抜けているのかもしれない
そんなところだろうと考察しながら後ろに回していた手を戻す
「まあそうかもしれないね」
『全中終わって気抜けてるのかも、監督降りたし』
「そうだね、オレも主将降りて気が抜けてるかもしれない」
『そんな風には見えないけど』
そもそも主将だろうが副主将だろうが彼の態度は変わらないし、2人の時も大して変わらない気がする
近くにいるあたしには分からないがクラスメイトや他のマネージャーから雰囲気が柔らかくなったと言われていたので、気は抜けてないみたいだけれどそういうところで変化はあるのかもしれない
「高校生になったらちゃんと帰れるかい?」
『帰れるわ、何回も征十郎置いて帰ってるでしょうに』
「心配してるんだよ、お姉ちゃんのこと」
『…急に兄弟ごっこ始めるじゃん』
「元々始めたの名前だろう?」
確かに言い始めたのはあたしだったがこんなにノリノリになってくれるとは思っていなかったと今まで何回か出てきたやり取りを思い出す
頼りない姉としっかりした弟、確かに征十郎がこのまま高校生になっても心配はないなと考える
そのまま家まで送ってもらい「また明日」と彼に告げ家の中に入る。あと何日彼らと一緒に学校に行けるんだろうと思いながら、廊下を歩いた