第60章 訪問と進路
『やめた方がいいんじゃない?』
「何で?」
『いい返事もらえないと思うよ』
「えー、そこは私も好き!ってとこじゃね?」
『誰が言うか』
「…答えもそれなわけ?」
『お察しが良いようで』
「やっぱなー」
頭をポリポリと掻く和成はショックを受けてなさそうに見えるがどうなんだろうか
いっそここで「ドッキリ大成功!」とか何かが出て来てくれた方が心が軽くなるんだけれどと、待ってみたが一向に出てこない
大きく溜め息を吐いた彼はあたしの名前を呼ぶ。何かと思って顔を上げると、笑っていた
「可愛いから抱き締めていい?」
『…え、あ、うん』
「どうした?」
『いや…普段許可なく抱きついてるやつがいるから、新鮮だなと思っただけ』
「はー前にもそんなこと言ってたな!」
いやこれが普通だよね、涼太がわんこなだけなんだよねと和成の腕に収まる直前、彼はあたしのことを可愛いと言っていたと思い出し、腕を避けるように布団へ顔を埋めた
「ブハッ!名前ちゃん何してんの!?」
『布団に顔を埋めてるだけ』
「だけじゃないっしょ!」
『だって可愛いなんて言われなれてないし…顔赤くて恥ずい』
「名前ちゃんが恥ずかしがるなんて珍しー…」
『あたしも恥ずかしいくらい思うんだけど!?』
「あ、やっと顔上げた。いい?」
『…ドウゾ』
彼の腕に包み込まれ、フラれたら相手を抱きしめるのは恒例行事なのだろうかと考えた
意外とすぐに腕を離され、激しい動悸を落ち着かせていると左頬に何かが当たる
目線を向け目に入ったのはあたしの頬に和成が唇を当てており、顔がさらに熱くなった
『和成!』
「フラレた記念にどーせならってな!」
『…心臓に悪いわ』
無理だと言って再び顔を布団に埋めると彼は一言二言話して帰ってしまった
それから快調に回復した彼はあたしは何もなかったかのように退院して騒がしい空間へとまた通うことへなった