第59章 引退と本物の
なんだか重い雰囲気になってしまったなと考えていると、先ほど笑顔になった涼太の表情がまた暗くなっている
「名前っちのお父さんって、」
『あくまで推測。詳しいことは雪さんと警察の人の方が知ってると思うよ』
「じゃあ、見つけたというのは…」
「緑間が考えているので正解だろうな、ただの橙崎の金欲しさだ」
「とうざき…?」
誰の苗字でもないその言葉をテツヤが復唱する
換気のために開けていた窓からタイミングよく風が吹き、オレンジ色の髪が視界にかかる
彼らの表情が見えなくなる。自分の表情も見られたくないのでちょうどいい
『あたしは橙崎のただの拾い子。緑間なら橙崎って苗字で分かるんじゃない?』
「…赤司と並ぶ日本有数の名家だ」
「そいえば名前ちんの家行ったとき表札見たけど、そんな名字だったかもー」
「それより名前ちゃん、拾い子って」
『いいんだよ。過ぎたことだから』
笑いながら乱れた髪を直しているといつものように黄色い髪が飛んで来る
この雰囲気で何事かと驚いていると、肩を掴んだまま彼が彼が笑った
「名前っちは名前っちっスよ!」
「…そうだな、名家とか言われてもわかんねーし」
「めいかって美味しそうだよね」
「食べ物じゃないのだよ」
「…私も名前ちゃんのことぎゅーってしよ!」
「ええ桃っち、黒子っちじゃなくていいんスか?」
「今は名前ちゃんなの!」
先ほどの雰囲気と変わり、賑やかな雰囲気が戻ってくる
一応怪我人なので抱き着く力加減はしてほしいと、抱き着いてくる桃色の髪を撫でる
涼太の髪も撫でてあげたいがヒビが入ってるのでまた今度にしようと賑やかな雰囲気に笑っていると、征十郎も笑っていた
「早く退院してくれ名前、オレ1人ではまとめられない」
『そうね、頑張るよ』
そんな賑やかな彼らも夕方にさよならし、せっかく長期休みが終わったばかりなのに休みが延長されてしまう
なんだかなあと、寂しい日々を過ごすことになるかと思ったが部活を引退して暇な彼らやクラスメイト、後輩までお見舞いに来てくれたので意外と賑やかな日々を過ごすことになった