第59章 引退と本物の
「名前」
「やっぱり骨折だったのか、オレの予想通りなのだよ」
「あんだけで骨折すんのかよ」
「青峰君!もう少し優しい言い方できないの!?」
『…悪かったな。あれだけで骨折して』
「腕も骨折ですか?」
『いや、ヒビ』
「ヒビで済んで良かったね~」
『ん?ん、うん…?』
紫原の言っていることが良かったのか悪かったのか分からないため曖昧な返事を返すと、俯いている涼太が目に入った
普段なら飛び付いてくるのにと疑問に思って彼を見ていると目が合ったが、すぐ逸らされてしまう
「…赤司君」
「ああ。名前、何か欲しいものはあるかい?」
『え、あ、特にないけど』
「何か欲しいものはあるかい?」
『いや、あ…あ、アイス?』
「分かった。黄瀬、ここ頼むぞ」
「え」
「行くぞ、お前ら」
「はい」
そう言ってくるりと涼太以外が背を向けて病室を出ていく
アイス1つにそんなに人数必要か?と疑問に思ったのが、残されたこの微妙な空気に理由が何となく分かった
征十郎達が出掛けてから互いに何も喋らないため時計の針が動く音だけ響く
どうしようかと悩んでいると、ようやく涼太が動いた
「名前っち、ごめん」
『え』
「オレ名前っち守るっていったばっかなのに、守れなかった」
『いや、今回は仕方ないよ』
「でも」
『別にいいじゃん。骨折で済んだんだし』
「骨折で済んだって…もっとひどい可能性あったんスか!?」
『…相手、刃物持ってたらしい』
「それ聞くと紫原っちすごいっスね」
『本当にね』
2mは違うなぁ…と改めて巨人のすごさを体感して頷き、何となく脳内で立体起動装置が出てきたがスルーする
ケガしたのが全中が終わってからで本当に良かったと、不幸中の幸いのことだけ考えて心のなかで自分を言い聞かせていた