第59章 引退と本物の
「右足骨折、右腕の骨にヒビ、だいたい完治に1ヶ月ぐらいかしらね」
『…もしかして入院ですか?』
「もしかしなくてもそうよ」
『骨折で入院するものですか?』
「規模によるけど今回は入院ね」
運ばれた先は雪さんが働いている病院だった。足と腕には大げさではというくらいの包帯が巻かれていて動かしずらい
元気だし家に帰ってもいいんだけどなと思うが「いてくれた方が目が届くから」と雪さんから言われてしまったので入院せざるを得ない
「個室にしておくね」
『…お金は』
「大丈夫だから今は治すことに専念しなさい」
治すことに専念と言うかそのために入院するのでは?と思いながら、彼女の顔を見れず雪さんの足元を見る
「まさか、今さら来るなんて思ってなかった。ごめんね」
『あたしもです』
「何か、心あたりとか兆候はなかった?」
『…特に』
「…いいって言うまで着替えはお手伝いさんにお願いして…移動は車椅子」
『車椅子』
「あと個室でも特別個室があるけど、そっちがいい?」
『いえ、それはさすがに遠慮します』
「一応テレビは見ても無料だから、何かあったらナースコールとか…まあ大丈夫よね」
『はい』
特別個室って何だと思いながらようやく雪さんの顔を見ると、笑っているのに悲しそうな顔をしておりなんだか申し訳ない気持ちが湧いてくる
その後、案内された部屋はものすごく広く、トイレはもちろん小さいTVに浴室まで着いており、さらには簡易キッチンと応接セットと言う物までもが着いていた
入院するために必要なものは先ほど届いたらしく、雪さんから受け取ると彼女はあたしを抱きしめてから部屋を去っていき、代わりにカラフルな頭たちが入ってくる