第59章 引退と本物の
「同じピアスって、きーちゃんと何かの記念でつけたの?」
「もちろん付き合っ『涼太が片耳にしか開けなくてもう片方もったいないから』」
「黄瀬ちん嘘ついたー?」
「…名前っちもそんな否定しなくてもいいじゃないっスか」
「そもそも嘘と言うものはつくものではないのだよ」
「緑間ってほんと真面目だな」
「ついて良い嘘と悪い嘘がある。それを守れば良いだろう」
征十郎の言う通りだなと考えていると夏休み前に工事していたところが終わっていることに気が付く
階段の先になにかの遊具の先が見えるが暑いからか子供の声は聞こえてこない
「この公園ストバスコートも出来たんだってよ!行こうぜ!」
「なんスかそれやるしかないじゃないスか!」
「こんな暑いのに外でバスケするの!?」
「しかも制服なのだよ」
「買ったらアイス奢ってくれるー?」
走り出す涼太と大輝の後をみんなで追いかける
引退したばっかりなのにバスケするのかと笑いながら彼らのことを追いかけ階段をゆっくり上っていると、すれ違った人とぶつかった
前に人が居るのにどうしてぶつかるのかなぁと疑問に思って舌打ちしたい衝動に駆られたが無視すると、今度は明確に押される
流石に押す力には勝てずそのまま落ちていく、振り出しに戻ったあたしは周りの景色を確認した。変わっていない、帝光の制服を着たままだ
『…痛っ』
立ち上がろうとすると足に鈍い痛みがあり顔を歪ませる
段々と近づいてくる押してきた相手を見ようと視線を上げると、少し自分に似た顔が視界に入った
知らない顔、だけど自分に少し似ているその顔に嫌な仮説が立つ
「名前、大きくなったな」
『…な、んで』
何かを言いながらあたしに一歩一歩近付いてくる男
彼が誰かは理解出来たが、心臓の音がとてもうるさく耳を塞いでしまいたくなる