第56章 全中前に夏祭りを
『涼太!みんなが待ってんの逆方向なんだけど!?』
「いいから着いてきて欲しいっス!」
『怒られてもあたしのせいにしないでよ?!』
「もちろんっスよ!だから名前っち!ちょっとだけ2人でお祭り」
「黄瀬君!一緒にお祭り回ろ!!」
「なっ、名前っち!助けて欲しいっス!」
『…仕方ないなぁ』
先回りしていた女の子に驚いた彼が足を止めた隙に腕を掴み返し、元来た道を走り屋台の隙間を抜け林の中へ入り身を屈める
何でこんなことになってるんだと手で仰ぎながら溜め息を吐く
『なんか前にもこんなことあった気がする』
「1年生の鬼ごっこの時っスね」
『…懐かしいなぁ』
「そーっスねぇ」
後ろから聞こえる涼太を探している声を聞きながら2人で聞こえる程度の小さな声で思い出話をしていると、女の子達の声が聞こえなくなった
携帯を開くと征十郎から何回か着信が来ていたので「ごめん鬼ごっこしてた」とメールを返し立ち上がり浴衣を直す
「は、オレ、名前っちと2人で回りたいんス!」
『いやみんな待ってるよ』
「やっぱりそうっスよねぇ…」
『…戻るまでの間だけなら、まあ』
「え、ホント!?手繋いでもいい!?」
『なんで?』
「…ナンパ避けと迷子にならないように、っスかね?」
こんだけ目立つから迷子にはならない気もするが、ナンパ避けは一理ある
流石に手を繋いでいれば察してナンパも引いてくれるだろう
さっき下駄で足踏んでしまったことに少し罪悪感を感じてなくもない。右手を彼の左手に添える
『向こう戻るまでの間だけね』
「名前っち…!」
『抱き着いたら離すから』
「ぐっ…」
先程の言葉通り少し店を回り、途中でりんご飴と征十郎から来た買ってきてほしいものリストを基に買い出しをし、戻るとカラフルな頭たちがだらんとくつろいでいる
ただ高身長の2人、緑間と紫原の姿がなくどうしたのかと周りを見渡すがやはり姿がない