第56章 全中前に夏祭りを
「…黄瀬遅くね?」
「何かあったんですかね…」
「混んでいるかと考えていたが、これだと遅すぎるのだよ」
『いや、逆ナンじゃない?』
「あー、きーちゃんモテるもんね…」
『あとはほら、去年おみこしの人と話してたじゃん?』
「…確率としては前者の方が高いな」
『あたしも征十郎と同意見だけど、誰か迎えに行ってきなよ』
「そうだね~、飲み物欲しいしー」
『涼太への心配じゃないんだね?』
紫原の率直な意見にツッコミを入れてから迎えに行く人は誰がいいかと話し合った結果、修学旅行の時も適任だったということであたしが行くことになった
『…ってことで行ってきます』
「何かあったらすぐに連絡してくれ、いいな」
『大丈夫お姉ちゃんだってそれくらい分かってるよ』
「早く帰ってこいよ」
『なら大輝が行ってきてよ』
「面倒だからパス」
『…もう!』
まあ彼らが行ったところでイケメンが増えるだけだしさつきを危険な目に晒したくもない
確かに1番適任かもしれないと1人で歩いているとそこらの人よりはでかい黄色い頭を見つけ、そこを目標に歩き出す
予想通り彼は女子に囲まれていた。囲んでいる女子をよく見ると気合いが入っている子、可愛い子から色っぽいお姉さん系まで揃っていて逃げ出したい衝動が出てきたが仕方ないと心の中で連呼し涼太へと近付く
『涼太』
「あ、名前っち!」
『みんな帰ってくるの待ってるんだけど』
「ごめんっス!ってことでお誘いは嬉しいんスけど…」
「その女の子黄瀬君の入ってるバスケ部の監督さんだよねー?付き合ってんのー?」
「そうっスよ!」
『断じて違う』
「ならいいじゃん。行こうよー」
バッチリメイクをした女の子がこちらを睨んできてすごく怖いが先に約束していたのはこちらだ
どうするかなと群れを眺めていると誰かに右手首を掴まれ方が跳ねた
「悪いっスけど、オレは名前っちと居たいんで」
『え』
「走って!」
『え、ええええ!?』
「黄瀬君待って!」
『デジャヴか!?』
去年も確かこんなことあった
お面の男軍団に追いかけれたり涼太に抱えられたり、去年のことなのにすぐに思い出せるのは楽しかったからだろうか
考えながら足を動かしていると、来た方向と逆方向に走っていることに気が付く