第56章 全中前に夏祭りを
集合場所に近づくと桃色と青色の頭が見えて来る
こちらに気が付かず最初は言い合いをしていたが、目が合った瞬間に笑顔を浮かべ、下駄の音を立てながらこちらに駆け寄ってくる彼女
可愛い以外の感想が脳から消えていく
「名前ちゃん!赤司君!」
『さつき!お待たせ!』
「浴衣似合うね!今年も可愛い」
『ありがとう。さつきも可愛いよ』
そんな可愛いさつきと手を繋ぎ元々彼女がいた集合場所へ足を進めると、腕を組んだままこちらを見る大輝が待っている
こちらをジッと見つめており、また何を考えているんだと考えながら彼に近寄った
「…苗字かよ」
『そうだけど、何その違う人かと思った的な言い分』
「昨日より格段に胸が小さくなってっから、何があったのかと思ってよ」
『あー出た出た!浴衣はそういうものなんですけど!』
「青峰、もう少し言い方を考えろ」
「いいじゃねぇかよ。んなもん適当で」
「ダメだよ青峰君!そんなこと言うから告白してきた子から逆にふられるんだよ!」
「…なんでさつきがんなこと知ってんだよ」
「当たり前でしょー!有名だもん!」
『ちょっと待ってあたしその話知らないんだけど』
確かにバスケ部の面々は人気だが告白されるようなことがあったのかと驚く
いや、涼太とか征十郎は知っているし、緑間も紫原も知っている
ただ大輝は授業中は寝ており、掃除や行事サボろうとしていて一部の女子から「ちゃんとやって!」と怒られる悪ガキポジションだ
ただそれでも見た目は悪くないし運動ができるので密かに人気があるのは知っていたが、いつの間に告白されていたのかと驚いていると、さつきが説明を始めてくれる
「まず青峰君に告白する子が居るでしょ?」
「…青峰に居たのか」
「赤司それどういう意味だ」
「その子が青峰君の対応を見て、やっぱりいいです…みたいな?」
『あー、納得』
「どんな対応をしたのか目に浮かぶほど分かるな」
「そうだよねー…」
「だから何でその話をさつきが知ってんだよ…」
『さつきの情報収集力すごいね』
どうしてあたしの耳に恋バナの話は入ってきてくれないんだろうと考えていると、急に後ろから両目を覆われ「だーれだ!」と声を掛けられた