第55章 全中予選
「そういやキセキの世代、全員は出てなかったよな」
『うん。反抗期中だから』
「反抗期?誰が?」
『あたしが』
一瞬固まったがブッと噴き出した彼がお腹を抱えてゲラゲラと笑い出す
ああいつもの和成だと安堵するが、相変わらずの沸点の低さゆえの大笑いに困っていると笑いながら彼が質問してきた
「なに、どういう反抗期なわけ?」
『理事長に反抗してんの、キセキの世代試合出せって言うから』
「…出してんじゃん?」
『出してるけど今日はあたしとコーチ、主将の意思だからいいの』
しかしあれはキセキを全員出せと言う意味だったのか、それとも1人でも必ず出せだったのか分からないが絶対あの狸の思い通りにはなってやらないと心の内で何かが燃える
「そうやってちゃんと考えてるとこ、監督らしいんじゃね?」
『…そう?』
「どーせ理事長に反抗してんのもワケあんだろ?」
『ちょっとね』
「ほらな、十分選手のこと考えてんじゃんか」
選手のことを考えているというよりかあたしがバラバラになるキセキを見たくないだけなんだが、彼がせっかく褒めてくれているので素直にその言葉は受け取っておく
そんな会話をしながら歩いているとあっという間に家の前、雪さんはまだ帰ってきていないのか窓から見える部屋の電気は点いてない
「じゃあありがとな名前ちゃん!明日頑張れよ!」
『うん。あたし戦わないけど、頑張る』
「負けたら許さねえからな!勝てよ!」
『…負けるわけないでしょ』
ニッと笑った和成につられて笑い返す。すると彼が今日の試合前のように元気に手を振ってきたので同じように振り返した
翌日の試合、帝光はトリプルスコアて勝利し全中出場を決める
あとおおよそ1ヶ月、何もないことを祈りながら気を抜かず彼らの事を支えていこうと、地区大会を優勝して喜んでいる彼らを見て思った