第55章 全中予選
『よっし、気合いは入ってるかな!』
帝光祭が終われば始まる全中地区予選、初戦は気を抜かなければ勝てるだろう相手
思えば監督になって初の公式戦、あたしは少し緊張しているが本日のスタメンであるキセキの世代は緊張していないように見える
「名前ちゃん、ビデオ撮っといた方がいい?」
『さつきには次の相手チームのスカウティングかな、頼んでいい?』
「もちろん!」
『よろしく。それじゃあスタメンの方々、特に大輝』
「あ?」
『手、抜いたらシメるからね』
「オレが手抜くわけないじゃないっスか!」
「オレはいつも通りやるだけなのだよ」
「オレも~」
「そうだね。いくら相手と差がついても気を抜かず全力でやろうか」
「…手なんか抜かねーよ」
「青峰君、今目を逸らしましたよね」
『なんだって?』
彼を見るが去年のような暗い表情ではなかった
どちらかと言うとその話題に触れてくれるなと言った表情で、後悔しているのか恥ずかしいのかは分からないが手を抜くことはなさそうだ
ただ申し訳ないがもう彼らの強さに対し相手になる人物はいないと思う
でもだからと言って手を抜いたり、投げやりになったり、誰かが泣くような光景は見たくないとユニフォーム姿になった彼らに笑いかける
『全力で戦って勝っておいで!』
「ああ」
「もちろんっス!」
「人事は尽くしている。当たり前なのだよ」
「楽勝だろ!」
「ん~」
「ボクは全力で応援します」
『…テツヤも途中から出てもらうからね』
コートへと歩き出すキセキの世代の背中は去年よりも頼もしく見える。いや事実頼もしい
そんな彼らを見送り、コーチとテツヤの間に腰を掛け記録をつけていく
結果、帝光は相手にダブルスコアで勝利した