第54章 みんなで帝光祭
「名前ちゃん、終わったー?」
『終わった、けど…』
「じゃあヘアメイクやるから来てー」
『う…うん。え、変じゃない?』
「似合ってる!似合ってるよ!」
「いつもとは全然違うよ!」
「もー、すごい色っぽい!」
『本当?金巻きあげられるかな』
みんなで笑いながら話をしようとしたら、「化粧するから目閉じて」と怒られてしまった
確かに喋りながらメイクするのは難しいだろうと大人しく目をつぶってなるべく喋らないよう心掛けていると、なんと向こうから話しかけてくる
「…名前ちゃんってメイクのやりがいがある」
『…それだけ不細工と?』
「逆だよ美人だからこそやりがいがあるの」
「髪も綺麗だからやりがいある!まとめなくても良かったかも~でもうなじ欲しい」
『えーめっちゃ褒めてくれんじゃん』
そう会話をしているうちに唇に何か細く冷たいものが触れて、グロスやリップをつけているだと分かるのに数秒かかった
それ以降彼女も本気になったのか喋らなくなってしまったが、溜め息と共に動きが止まる
「できたーっ!はい!鏡見て!」
『おぉ…前回よりクオリティが高い』
「本番だからね!うん…完璧!」
目も大きくなっており、化粧のおかげで元々きれいな肌もさらに綺麗になっている
血色もプラスされまつ毛も伸びていて、確かにこの見た目なら間違いなく高校生は名乗れそうだ
鏡を戻して周りを見ると、先ほどまで準備していた女の子が誰もいなくなっている
『あれ、他の人は? 』
「先に行ったよ?」
『ヤバい!』
「まだ開始まで時間あるよ?」
『いやこの姿で1人教室行くのがどれだけ酷か…』
「それなら一緒に行く?」
『優しー!いくらでも待ってます』
立ち上がろうとすると長いスリットから足がスッと出てきて知らない感覚にソワソワしてしまう
後片付けを待っている間にヒールに履き替えると最初はバランスを取るのに手間取ったが急に立てるようになる
流石あたしの運動神経だと自画自賛している内に、彼女たちはすべての荷物をまとめ終えた
また去年も着たようなマントを被せられ、更衣室を後にした