第53章 修学旅行 後編
『征十郎、大変だったね』
「声を掛けてくれてもいいじゃないか」
『声かけても意味ないでしょ』
「抜け出したんですか?」
「ああ、しっかりお断りさせていただいたよ」
「…きーちゃんはまだ抜け出せてないみたいだけど」
「人だかりがさらに人を呼んでいるんでしょうね、どんどん増えてます」
『置いてっていいよ。緑間探しに行こ』
アイスを食べながら歩き出そうとすると人だかりから「待って!助けて欲しいっス!」という涼太の声が聞こえてくる
自分じゃどうにか出来ないのだろうかと思いながら溜め息を吐く
「…と黄瀬が言っているが、どうするんだい?」
『ったく…しょうがないなぁ』
「何するんですか?」
『…ぶりっ子になります』
「何それ~」
『見てりゃ分かる。征十郎アイス持ってて』
「食べていいかい?」
『ダメに決まってんでしょ』
涼太のことを囲んでいる女の子達の輪を避けて涼太の元へと歩く
この短時間でこんなに多くの人を集めたのかいっそ宗教でも開けるんじゃないかと思いながら、この人だかりの元凶ある涼太の腕を掴んだ
「ちょっと!黄瀬君に抱きつかないでよ!」
『そっちこそ囲むのやめてくれますか』
「名前っちがオレのために戦ってる…!」
『うるさい戻るよ』
「はいっス!」
「ちょ、ちょっと黄瀬君!」
「ごめん。うるさいっスわ」
しんと周りが静かになる。こんな嫌悪感丸出しの涼太の目久々に見たと、こちらも一瞬驚いた
彼の通ろうとしているところの人が避け道ができる
そこを通りさつき達が待つところへと戻ってきて振り返ると先ほどまでいた人込みが嘘のように散っていた
そして涼太も嬉しそうにニコニコと笑っており、アイスを持って待っている征十郎の横にはチキンを食べる大輝とでかいたこ焼きの何かを持つ緑間が戻ってきていた