第53章 修学旅行 後編
「名前ちん」
『どしたの紫原』
「名前ちん、携帯ストラップなんて付けてたっけー?」
彼はあたしのポッケからはみ出ている携帯のストラップを指さす
これはこの間雪さんと買い物に出かけた際、なんだか惹かれて購入したものだ
チョコレートをイメージしているそれは可愛すぎず、邪魔にならないのでここが定位置になり始めている
『…意外と見てるね』
「だって、そのストラップお菓子じゃ~ん?」
『うん。この間買った』
「オレ的には美味しそ~」
『…食べないでね。紫原は何かお守り買った?』
「これ買ったー」
『鈴?』
「幸せを呼ぶ鈴なんだってー」
『…何か可愛いね』
その鈴を包まれていた紙から取り出してチリンと音を鳴らす紫原
なんだか大きい手に対し小さい鈴を持っているのがギャップなのか可愛く感じる
これで幸せが来るなら嬉しいなと、わざと揺らして鈴を鳴らす彼を見て笑ってしまった
「どうしたの~」
『ん?紫原に幸せ来るかなって』
「オレ、名前ちんとしゃべってるだけで幸せだよー」
『…え』
「赤ちんとミドチンみたいにそこまで厳しくないし、黄瀬ちんと峰ちんみたいにバカじゃないし~
黒ちんみたいに意見がぶつからないから、好きだよ~」
『ああ、そういう意味ね』
涼太と大輝がバカなのは否定しないでおこうと笑いながら「買ったばかりなんだし仕舞いな」と紫原に鈴をカバンに入れさせる
他のみんなは時間かかってるなと、授受所へ視線をやるとお守りを買う征十郎の姿が目に入った
距離と人がいるので何のお守りを買ったのかは分からないが紫原のように「何買ったの?」と聞くことも出来ず、全員戻ってきたところでその神社を後にした