第53章 修学旅行 後編
「ね!せっかくだし名前ちゃんもやろうよ!」
『え、別に叶えたい恋の願いとかないんだけど』
「叶えたくない恋の願いはあるんですか?」
「何言ってんスか黒子っち!そんなもんあるわけないじゃないっスかー!」
「相手がいないとやってはいけないとは書いてないのだよ」
「じゃあ問題ないんじゃな~い?」
確かに相手が居ない人がやってはダメとは書いてないし、京都に来る機会なんてなかなかない
せっかくならやってみてもいいかもしれないと、意見を手のひら返すことにする
『じゃあ、やろうかな』
「真っすぐ石までたどり着けよ」
『それ絶対脳みそ筋肉って言われるから嫌。行くよー?』
「名前っち!相手がオレなら真っすぐ!それ以外なら曲がって!」
『涼太が離れてきますように』
「あー!曲がって!曲がってほしいっスー!」
そんな騒いでいる涼太の声を聴き流しながら歩く
自分では真っすぐ歩いているつもりだがどうなんだろうかと不安になりながら歩いていると、つま先が何かにぶつかった
辿り着いたかと思って目を開けると、石と一緒に黒いズボンが目に入る
「無事辿り着いたようで何よりだよ」
『…何?待ってたの』
「千鳥足の名前が見れるかと思ったんだけどね、見れなくて残念だ」
『みんなと一緒にあっちで待ってればよかったじゃん』
「着いたのに1人は寂しいじゃないか」
笑う彼に「まったく」と言いながら今も騒いでいる彼らのところへ戻る
叶えたい恋の願いなんてないが、辿り着けなかったより辿り着けた方が気持ちが良い
唯一辿り着けなかった涼太をからかいながら、またもお参りに向かった