第2章 赤いカレ
「いい加減、座ったらどうだい?」
言われてずっと立ちっぱなしだったことに気づく。確かに、立ったまま喋っているのはおかしい
彼の近くに座るのが、恐れ多い
別にオーラが怖い、重いとかそういう訳では無いのだが、憧れていたもの、人物の近くというのは寄りがたいものだ。遠巻きの1人でいたい
『…じゃあ正面に、失礼します』
「どうしてそんな話し方で喋るんだい?」
『え…なんとなく』
「普通に接してくれ、同じ年だろう?」
『…頑張る』
「頑張ることでもないだろう」
くすくすと笑う赤司征十郎に対する恥ずかしさから頬が赤くなる
恋ではなく、ただ単に笑われてしまったことが恥ずかしい
恥ずかしさを隠すべく、飲み物へと手をのばす
#NAME4さんはどうやらアイスココアを用意したらしい。口に含んだ瞬間に心地よい甘さが口に広がった
と言いたいが今そんな味わってる余裕はない、本当に
「顔が、赤いね」
『征十郎…くんの髪も、大変綺麗な赤で』
「地毛だよ。君の髪は、綺麗な黒だね」
『…ありがとうございます』
今更になって怖いと感じた。彼がここにいるということは、漫画の世界にいると言うんだろうか
身が小さくなり、現実にいるはずの無い人が目の前にいるなんて、何が起きているのだろう。夢で済ませてしまいたい
「大丈夫かい?」
『…え』
「顔色が悪い」
『あ、え…そう?』
「表情が忙しいんだね」
馬鹿にしとんのかと怒りたくなったがさすがに自分より強そうな人には怒れない。日本人だもの
ちょっと沈黙が続くと、彼は気を使ってか話しかけてくれた
「今度、バスケを見にこないか」
『バスケ?』
「学校でやってるんだ」
『見に行っていいなら…?』
「ぜひ来てくれ」
綺麗すぎる彼の笑みは生で見るととんでもない攻撃力をお持ちで内心何も悪いこともしてないのに謝ってしまう
「征十郎くん、おまたせお話終わったわ」
「はい。お邪魔しました」
「いいえ!いつでも来てくれていいんだからね!」
「それじゃあ名前、また」
あたしは来てくれなくていいと思うが、これから学校でほとんど顔を合わせることがあるんだろう。慣れろ自分
ヒラヒラと手を振る彼に手を振り返す
その日は何も無かったが、これからのことを考えると頭の奥で痛みを感じた