第8章 夏祭り
翌日、お昼すぎから雪さんに髪を好きにされる
彼女が本当に楽しそうで、そこまで喜んでくれるならこちらも好き勝手された甲斐があると考えていると後頭部のあたりで動いていた手が止まった
「出来た!我ながら良い出来!」
『ありがとうございます。楽しそうで何よりです』
本気を出した彼女は凄かった。どこにそんなアクセサリーがあったんだという花のアクセサリーを頭に添えられる
雪さんが選んだ浴衣を着せられ、そのままデジカメでパシャパシャと写真を撮り始める雪さんは本当に楽しそうだった
終わってからどんな風になっているんだろうと鏡で確認しようとするとチャイムが鳴る。時間を確認すると征十郎との待ち合わせ時間が迫っている
『…征十郎かな』
「玄関行くなら一緒に下駄持ってく?」
『はい』
新品の下駄を受け取りそのまま玄関に行く
すぐ出かけるわけではないので適当なサンダルを履いてドアを開けると、私服の征十郎が立っていた
『わざわざごめんね、ありがとう』
「…ああ、気にしなくていいよ。もう行けるのかい?」
『ちょっとまってもらっていい?中入って涼んでて』
外は暑いだろうと彼をリビングに通すと廊下から雪さんがぴょこりと顔をのぞかせる
なんだと征十郎と2人で彼女を見ると、そのままこちらに寄ってきた
「征十郎君浴衣着てない!着る!?」
「こんにちは。お久しぶりです」
「入学式以来ね、背伸びた?」
「ええ、人並みには」
「成長期だものね、もう身長越されちゃったかな〜浴衣着る?」
『なんで男物の浴衣が家に』
「いいんですか?」
『着るんかい』
「もちろん!着付けしようか?」
「いえ、着れるので一式貸していただければ」
『着れるの?』
目の前のやりとりにツッコミが追いつかず困っていると
雪さんが浴衣を持って走ってくる。この光景昨日見たばかりだと目を擦った
彼女の手に黒色の浴衣がある。初めて見るが一体誰のなのか、どこにあったのか首を傾げる