第8章 夏祭り
その晩、雪さんに「明日、夏祭りに行く」と話を共有すると彼女が目を輝かせながらこちらを向く
「夏祭り行くなんて久しぶりじゃない?」
『征十郎から誘われたので』
「赤司君と遊ぶのも久しぶりね?」
『遊園地以来ですかね』
お互い遊びに行こうと誘うタイプじゃなかったので彼と遊ぶことは少なかった
クラブがない日も彼はお父さんから指示されている習い事や勉強があり、クラブがある日でも彼は休んでそれをやっていたから誘いにくかったのもあるのかもしれない
今回の彼はどういう考えなんだろうと悩んでいると、未だ目が輝いている彼女がるんるんで口を開く
「じゃあ浴衣着て行く?」
『…浴衣?』
雪さんから言われて夏祭りと言えば浴衣だと気が付く。ただ前回行った時より身長が伸びているので新調するしかないだろう
別にどうしても着たいわけでもないし、征十郎が来る前に買いに行っても問題ないかと考えていると、雪さんの姿が目の前から消えていた
どこへ行ったのかと首を動かし探していると、彼女はビニールに包まれた浴衣を持って戻ってくる
「じゃーん!浴衣!」
『なんであるんですか』
「#NAME1#ちゃんに似合いそうだと思って」
『答えになってますかそれ』
「着てみて!」
彼女が持ってきた浴衣を服の上から合わせるように言われ羽織る
たぶん問題ないだろうと判断し、汚すのが嫌なのですぐに脱いだ
「明日出かける前に髪と一緒に着付けさせてね」
『…髪もやってくれるんですか』
「#NAME1#ちゃん全然出かけてくれないからおめかしする機会ないんだもの
ああ、責めてるわけではなくて」
『いえ、事実です』
行っても学校、その辺に買い物、友達と遊びに行くこともない
ニコニコと楽しそうに笑う彼女の姿を見て悪い気はしない。せっかくの機会だしとお願いすることにした