第86章 ヒーリング・アイ
『…あたし後ろの席行こうと思ったんだけど』
「後ろだと余計に酔いやすい
前の方がいいだろう」
『だからってこの体制は嫌だ』
「仕方ないだろう」
『…分かったよ』
眼を閉じて酔いがなくなるようにと考え事をする
しばらくすると征十郎があたしの頭を撫で始めた
『くすぐったい』
「#NAME1#の眼の能力は進化しても、自分のことはわからないのかい?」
『無視かよ!
…まあいいや、そうっぽいよ? 』
「それは不便そうだね」
『でも、他の人の役に立てると考えれば悪くもないよ』
あたしがそう言うと征十郎は頭を撫でるのをピタリと止めた
それを疑問に思って目を開けると、あたしをびっくりした顔で見ている征十郎と目が合った
『…どうした?』
「いや、何でもない」
『何それ、気になるタイプじゃん』
「気にするな」
『普通気にするでしょ』
笑って見せると、征十郎はフッと笑い返してきた
『あの、征十郎
酔いが治ったんで…そろそろ起きたいんですけど』
「もう少しこのままで居させてくれ」
『!?』
結局解放されたのはバスが帝光中に着いてから