第46章 虹色の卒業式
「名前っち大丈夫っスか?」
「除菌ティッシュあるよ。消毒する?」
「なんでオレが加害者みたいになってんだよ、つかなんだ除菌って」
「どう考えても加害者ですよ」
「逮捕~」
「これじゃアメリカ行けねえな」
「残念でしたね」
「おい緑間、ラッキーアイテム怖いから下ろせ」
「今日のラッキーアイテムは五寸釘なのだよ」
「いや怖えって」
虹村先輩に戯れる彼らを見て笑みが零れるが、この光景を見られるのも最後かと思うと今度は笑みではなく涙が零れてくる
既に泣き顔を見られたので遅いかもしれないが、さつきのことを抱きしめて周りから顔をみえないように俯く
先ほど抱きしめられた虹村先輩と違い体が柔らかいな、なんておじさんみたいなことを一瞬考えたがすぐにその思考を振り払う
「虹村さん、名前ちゃんショックで泣いちゃいましたよ!」
「いやぜってえ違うだろ」
「ほら!オレの胸貸してあげるっスよー?」
『いらん』
「名前っちから抱きしめてもらうチャンスなのに…!」
騒ぐ楽しそうなみんなとしばらく話していると段々と人が減っていく
もう周りは解散しているのかと察し、虹村先輩もチラリと時計を見て肩にカバンを掛けなおす
「そろそろ行かねえと、ありがとなお前ら」
「いえ、虹村さんもお元気で」
「苗字も桃井も、頑張れよ」
『虹村先輩こそ、アメリカで頑張って下さい』
「だから泣くなっつの」
『あと、迷子と美人に気を付けてくださいね』
「なんだそれ」
ケラケラと笑いながら虹村先輩は去っていく
これで頼れる先輩は居なくなってしまったが、あたしにはまだ頼りになる弟がいるし、他のみんなもなんだかんだ頼りにすれば力になってくれるのも知っている
絶対口にしないが、今の彼らなら誰に何があっても助けるために一緒に尽力してくれるだろう
彼らを信じれば大丈夫。だけど絶対口にはしないと固く決意しながら涙を拭った