第46章 虹色の卒業式
『これからすぐ、アメリカに?』
「そうなんだよなぁ…できれば今年の全中見てぇんだけど…無理っぽいな」
『ビデオ録って送りましょうか』
「いや、いい。お前とキセキと黒子が居れば優勝できんだろ。頼りにしてんぜ、新監督」
『…そんなこと言わないでくださいよ』
景色が歪み始めて気がつけば頬に水滴が伝う。彼はもう帝光はおろか、日本からいなくなってしまう
夏休みの全中前に「やってるかー」とか遊びにも来てくれないんだろうと考えが、どんどんマイナスな方向に行ってしまい目尻から流れる水が止まらなくなる
『あいつらまとめられる自信ないんで、留年してください』
「無理だろ、ここにあんの何だと思ってんだよ」
『…卒業証書、ですね』
「あー、もう泣くなよ」
『別れを悲しんで何が悪いんですか』
「それよりお前はもっと重要なこと忘れてんだろ」
『…そうですね』
どんどん溢れこぼれていく涙をカーディガンの袖で拭うが、拭いてもすぐに伝ってしまう
涙のせいで顔がぐちゃぐちゃでも鼻声でも、待ってもらったんだからこれは伝えなきゃいけないんだと、虹村先輩に向き合う
『ごめんなさい。あたしは虹村先輩とは付き合えません』
「…やっぱりな」
『虹村先輩のことは好きです。だけどそれは…恋愛の好きじゃ、ない気がして…』
「赤司とかは候補じゃねぇの?」
『…まあ、そもそもあたしはこの世界の人とは付き合えないんで』
「この世界?」
『多分、いずれ消えてしまうんで』
視線の先でカラフルな彼らは先輩たちとふざけあっている
卒業まではいられると信じているだろうけど、実際どうなんだろうと泣いたせいか後ろ向きな気持ちで考える
彼は嘘ではないと感じたのか目を見開き驚いた様子でこちらを見ていた