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【黒子のバスケ】トリップしたけど…え?《1》

第45章 これってそういう意味?





『はっくしゅ!』

「おや、風邪かい?」

『寒暖差かなぁ…まだ夜は寒いよね。喉もちょっとイガイガする』

「のど飴持ってこようか」

『あるの?』

「ああ、取ってくる」


彼は家の中に戻りしばらく経った後リンゴ味と書かれたのど飴を持ってくる。しかも3つ、そのまま手のひらに置かれた


『なんで3つ?』

「1つじゃ足りないかと思ってね」

『いや1つでいいんだけど』

「どうせ減らないんだ。もらってくれ」

『…ありがとう』

「ちなみにこれもりんご飴に入るのかい?」

『ちょっと違うと思う』


封を開けて飴を口に入れると、先ほどとは違う人工的なりんごの味が広がる

これはりんご飴じゃないよなあと考えながら舌で転がし外に出ると、まだ冷たい空気が頬や手を刺してくる


『もうマフラーいらなくなるかな』

「あっという間に春になるよ」

『確かにもうすぐ卒業式だもんなあ、早いなあ…』


そしてすぐ新年度が始まってしまうとまた彼とどうでもいいような会話を始めた

しばらく歩いたところで信号が赤で立ち止まる

それと同時に行きにもあった沈黙が生じ、からころと歯と飴がぶつかる音が小さく聞こえる


「名前」

『ん?』

「ありがとう」

『…今回お礼を言うのはあたしじゃない?』

「前に黒子が青峰とは距離が近すぎて、改まってお礼が言えないと言っていただろう」

『そんなこともあったね』

「それと同じだ。ありがとう監督になってくれて」


彼が何を言いたいかは分かっている。監督に就任したのは彼らをバラバラにしたくなくてやったことなんだろうと

頭のいい彼はもちろん、テツヤあたりは察しているかもしれない


『…お礼言うのは、全中優勝してからにしてもらっていい?』

「そうだね。そうしようか」

『まあ監督って言っても何もしてないけど、職務放棄』

「そんなことないさ、お姉ちゃんはいざとなると頼るになるね」

『でしょーいざとなる時以外は頼んだよ』


いつもの謎のノリに2人で笑いながら、信号が青になったので歩き始める

口の中の飴が小さくなっていくのと比例して家の距離が近くなる。当たり前だが飴は最後には溶けてなくなってしまった

きっとこの飴には意味はないんだろうと考えながら彼と2人、歩みを進めた






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